FC2ブログ

伍 19


私は眠ってしまったようだ。
殿下はいつの間にか居なくなっていた。
チェジュンと一緒に来ていた母が、殿下をフォローするかのようにこう言った。

「チェギョン、殿下の気持ちも考えてあげなさいね。 皇后さまが嘘吐くなんて思ってもいないから、あんたを誤解してたから、あんな態度だったのよ。 それに私が言うことじゃないけど、殿下はあんたのことが好きだったんだって。 だから余計に許せなかったんだと思うの。 殿下の立場になって考えてあげるのよ」

殿下の立場になって殿下の気持ちを考える。
そんな風に考えたら殿下の言動も判らないでもない、かな?
でもあれは忘れられない。
母は自分があんな目に遭ったわけではないから判らないのだ。

私はそう結論づけた。



その夜、なんと皇太后さまと陛下と皇后さまが私の病室にやって来た。
私は叱られるんだと思って、ふらつきながらもベッドから降りて謝った。

「陛下、申し訳ございません。 私が至らないせいで、学校で倒れるという失態を・・・・」

続く言葉を言うことは出来なかった。
皇太后さまが私を抱き締めたから。

驚きすぎて声も出ない私に、陛下たち3人が謝ってくれた。

「ごめんなさい、妃宮。 全部私のせいです。 陛下たちが叱ったのも、太子がそなたを無視したのも、そのせいで苛めを受けたのも、全て私のせいです。 ごめんなさい、妃宮。 ごめんなさい」

皇后さまは泣き崩れた。

「すまなかった、妃宮。 確認もせず、私たちいい大人が難癖をつけた。 本当に大人げなかった、悪かった」

なんと陛下が頭を下げてくれた。

「妃宮、ほんとに申し訳ないことをした。 3人で、いや4人で寄ってたかって妃宮を苛めてしまった。 宮でも学校でも辛い目に遭わせてしまった。 本当にすまなかった、妃宮」

皇太后さまも目を潤ませている。

もう、驚きしかなかった。




お三方が病室を出てから、朝まで私は眠れなかった。
陛下たちがあんな風に此処まで足を運んで謝ってくださるなんて。
・・・・・・・信じてもいいんだろうか。

まだ判らない。
母は信じろと言う。
殿下の話もちゃんと聞けと言われた。

とりあえず明日殿下の話は聞こう。
そう思った。




次の日の午後、殿下が来た。
母は私に目で合図して部屋を出た。
パン女官さんは隣の部屋に行った。

昨日チェ尚宮さんがそこに入った時、こっちに来れなくて閉じ込めてしまうんじゃないかと思ったのだが、廊下側にドアがあるらしい。
出入り出来てよかった。

そう思いながらベッドヘッドを上げて身体を起こした。

食事をしてると言うと、殿下が私に微笑んだ。

本当に?
見間違いかな??
反応も出来なくて私はそれ以降口を噤んだ。


殿下の話が始まった。

可愛さ余って憎さ百倍。
これが私にも当てはまることに気付いた。
好きな殿下に冷たくされて、嫌いになろうとしてたんだ。
でも。
それを言うのはまだ怖い。

うっかり口にして、

『簡単な女だ。 皇太子がこんなにすぐ離婚なんて出来ないから言ってやっただけなのに、すっかりその気になったな』

こんな風に殿下が心の中で笑っていたらどうしよう。
そう考えてしまって、私はずっと口を噤んでいた。


そんな自分が嫌なのに、でも殿下を信じられない。
おでこへのキスが突然で、顔を赤くして飛び退いた私を殿下が笑った。
あ、やっぱり揶揄われたんだ、そう思った。

でも・・・謝ってくれた。
違うと言ってくれた。
本当だろうか?

昨日の私の言葉が嬉しかったっていうのも本当?
聞きたいが口には出せない。

何も言わない私に呆れてるんじゃないか、そう思っていたのに、殿下はまた明日話そう、そう言ってくれた。
またおでこにキスしてくれた。
信じていいの?
でも信じるのが怖い。


私はそんな自分が情けなくて、つい涙を零した。

足を動かしかけていた殿下が慌てた。

「ごめん、嫌だったか?」

そうではないから、私は首を横に振った。
それを見たであろう殿下が、ほっと息を吐いて言った。

「また明日来るよ。 おやすみ、チェギョン。 あ、いや、おやすみはおかしいな。 また明日」

微笑みながら手を振って、殿下は病室を出た。




その夜、もう大丈夫だからとマ母を家に帰し、パン女官さんがお休みなさいと隣の部屋に入ってから、私は布団にもぐってガンヒョンに電話をした。
殿下のことを聞いてほしかったから。
どうすればいいか教えてほしかったから。


私の話を聞いた後、ガンヒョンは言った。

『その、可愛さ余ってって話、殿下に言ったら喜ぶと思うけど?』
「・・・出来ない」
『してやったり!って思われたら嫌だから?』
「うん」
『うーん、それって結局殿下や陛下たちを信じてないってことでしょ。 皇后さまだって真剣に謝ってくれたと思うよ。 ヒョリンさんの嘘に踊らされてあんたを辛い目に遭わせてしまったからこそ、心から謝ってくれたと思う』
「・・・」
『チェギョン、人を疑うって疲れると思うの。 だから信じてみたら?』
「もし裏切られたら? またあんなことになったらどうすればいいの?」
『今度は大丈夫だって!』
「だからもし、よ」
『もし、ね。 だったら日本に行けばいいじゃないの。 陛下が言ってくれたんでしょ、半年日本で静養して、その後殿下と留学って』
「うん・・・」
『半年経って宮へ戻った時、前と同じことになったら日本に逃げればいいじゃない。 伯父さんは日本国籍を取得したんでしょ、その伯父さんの籍に形だけでも入れてもらえば、宮は外国籍の妃宮なんて認めないから今度こそ離婚出来るわよ。 ま、そうはならないと思うけどね。 あんたは殿下と留学すると思う』


ガンヒョンが言ったようには簡単にいかないだろうが、それでも、ガンヒョンにはっきり言ってもらえたことで、私は少し気持ちが軽くなっていた。
私には味方がいるんだと思えたから。
だから、陛下が言ってくれた、皇后さまの提案を受けようかと思ったのだ。




次の日母にそう言うと、母にもそのほうがいいと思うと言われた。

「殿下はきっとあんたを大事にしてくれるわ」

///そ、そう言いきられても、困る、けど・・・//

とにかく、ガンヒョンに背中を押されたことと、母にはっきり言われたことで、私は殿下を信じてみることにした。



午後、殿下が顔を見せた。
私は殿下の目を見てはっきり口にした。

「殿下を信じることにしました。 皇后さまの提案を受けようと思います。 私を半年日本に行かせてください」




関連記事
スポンサーサイト