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伍拾壱 11



『本当に傷付けるつもりはありませんでした!』
『ちょっと脅かそうと思っただけなんです!』

王族の、いや元王族の馬鹿娘どもは皇宮警察で必死にそう叫んだそうだが、ナイフをちらつかせておいてそんな言い訳が通用すると思う方がおかしい。

被害者が訓育で入宮した皇太子の許婚で、目撃者が皇族ということもあり、馬鹿な娘どもはその日のうちに起訴されたのである。




チェギョンが帰った後の夕食後、コン内官がその報告を持って来た時、俺の部屋にはユルが居た。

彼の科学高校の講義は今日が1回目だったので、自慢話というか難し過ぎて訳の判らない数学の話を、延々と聞かされていることに辟易していた俺は、ユルの話を切ることが出来て内心ほっとした。


「そうですか。 当然ですね」

するとユルは、話の腰を折られたことを気にするでもなくニヤッと笑った。

「することが早いな、シン」
「それも当然だ」


馬鹿娘どもは、傷害未遂で懲役刑を食らうはずだ。
執行猶予など付けさせないと俺が言ったことで、ユルは再び口を開いた。

「未遂なのに実刑なんて厳しくないか?」
「前例を作らないと言い切ったお前に言われたくない」
「はははっ、まあね」

王族なのに、先帝が決めた皇太子の許婚に対して暴挙に出た馬鹿な奴らには、制裁が加えられて当然だとユルは続けた。

「明日からはチェギョンの周りを翊衛司で固めるつもりだ」
「うん、その方がいいね」

皇太子の眼が光っていると思えば、ああいうおかしな連中は現れないだろうから、というユルの言葉に、一層チェギョンを守るという気持ちが強くなった。






そして次の日、俺は早くから雲硯宮の玄関でチェギョンを待っていた。

東宮殿に従事している女官たちが、早々に出て行く俺を見て眼を丸くしようと何とも思わないし、皇太子としての威厳がどうとかコン内官に言われてもスルーだ。
誰がなんと言おうと関係ない、俺はチェギョンに会いたいのだ。



暫くして、チョン女官と翊衛司たちに囲まれてチェギョンがやって来た。


「おはようチェギョン」

思い切りの笑顔でそう言ったというのに、返って来た返事は「おはようございます、皇太子殿下」だった。
昨日タメ口でと約束したのにと思ったが、女官や翊衛司が居るからだと気付き、俺はチェギョンを引っ張って建物内に入った。
勿論他の奴らは外で待機だ。



「チェギョン、これで二人っきりだ。 昨日は怖かったろ? もう落ち着いたか?」
「はい、あ、うんシン君」

笑顔のチェギョンがあまりにも可愛くて、とうとうというかやっとというか、俺はその愛しい身体を引き寄せてしまった。

「シ、シン君っ・・・!」

中にもお姉さんたちが居るのにと胸の辺りから聞こえたが、そんなことでやっと抱き締めたチェギョンを離すはずがない。

「会いたかったチェギョン。 すごくすごく会いたかったんだ」

更に力を入れたせいか、チェギョンが息苦しいと言って俺の胸を叩いたので、少し力を緩めた。
が、細い身体に回した腕は解かない。

するとチェギョンは、俺を見上げて真面目な顔でこう言ったのである。

「殿下、お話があります」






改まって何だろう、どうしたのだろう、もしかしたら告白されるのだろうか、ならば男の俺が先に言うべきだ!

部屋で向かい合って座りながらも、意を決したようなチェギョンを前にそう決心した俺は、先に口を開いた。

「俺はお前が好きだ」
「・・・・・え?」


唐突だったのか、チェギョンは眼を丸くして俺を見たが、俺はそのまま言葉を続けた。

「おじいさまが決めた話だが、俺はお前で良かったと心から思っている。 ひと目で好きになり、お前の姿を見て声を聞くたびにもっと好きになった。 改めてプロポーズさせてくれ。 チェギョン、俺と結婚して欲しい」

そのうちきちんと伝えようと思っていたこともあるが、全て俺の本心なので、言葉はスラスラと出て来た。


が、そのせいかどうか、チェギョンはおかしなことを言ったのである。

「あの、大丈夫です、殿下。 今は私たちだけですので」
「え???」

何が「大丈夫」なのか判らずにいると、チェギョンは居住まいを正した。

「実は、このお話はお断りしたいと思っています」
「え??」


今なんて??
断りたいと言ったか??


チェギョンの言葉を反芻していると、彼女は俺の前で頭を下げてこう言ったのだ。

「民間人の私が皇太子妃なんて、とんでもないことでございます。 どうか、私のことはお捨て置きくださり、殿下に相応しいお嬢さまをお迎えください」


殿下に相応しいお嬢さま。


その言葉に納得が行き、俺は俯いたままでいるチェギョンの両手を握った。
誰かに何かを言われたに決まっている!



「で、殿下?」

不安そうに俺を見上げる可愛いチェギョンの手は小さく細く、俺は更に強くその手を握って殊更優しく聞いた。

「誰に何を言われたんだ?」
「え??」
「王族の誰かが接触して来たんだろう? 翊衛司は朝一番で付けたから、昨夜電話があったのか? それとも家にまで押し掛けられたのか?」


絶対そうに決まっている!
チェギョンは言わされているのだ!

俺はそう確信していた。


「あ、いえ、・・・そうでは、」
「大丈夫だ、チェギョン。 俺が守ると言っただろう? 誰なんだ? 名前を知らなくても、特徴を言ってくれれば見当が付く。 大丈夫だ、教えてくれ」


だがチェギョンは、違うとかそうじゃないとか、私が断りたいんだとか言った。
可哀想に、昨日のこともあって余程怖かったのだろう。


「大丈夫だ、俺が守る。 絶対にお前に手は出させない」
「・・・・・」



手を引き寄せたままなので顔が近い。
チェギョンの可愛い顔と柔らかそうな唇が俺の眼の前にある。

唇から視線を外せずにいた時、それが薄く開いてチェギョンは微笑んだ。


「判りました、もう大丈夫です」
「チェギョン? そいつを庇わなくてもいいんだぞ」

だから誰なのか言えと、もう一度促したのだが、チェギョンは首を横に振った。

「ううん、シン君がそう言ってくれたから、もう大丈夫」
「チェギョン・・・」



なんて優しいんだ。

「お前は優しいな。 判った、その優しさに免じてこれ以上聞かずにおく」


そう言いながら、俺はその柔らかい両手を包んで撫でた。
愛おしくて愛おしくてたまらない。

その優しさと可愛さ、そして清らかな笑顔に気持ちを溢れさせた俺は、とうとうその唇を塞いでしまったのである。



チェギョンとキスしている。

その事実は俺を一層興奮させた。
初めてだったこともあり、夢中になって、俺たちはいつまでもキスをしていた。





4日の予定でしたが、書けたので更新しておきます。
次は、9日はダメだと思うので、8日に更新したいですう。


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コメント 24

There are no comments yet.
-
2022/08/04 (Thu) 02:53

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まあむ
2022/08/04 (Thu) 04:59

おはようございます
チェギョンは意を決して言ったと思いますが、
シン君はそう捉えたのね~
あんなことがあったんだし、無理もないけど
彼の中では両思いですから┄笑
突然だけどプロポーズの真剣さは間違いないから
彼女にその思いが届いたのかしら??

-
2022/08/04 (Thu) 05:07

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tiem
2022/08/04 (Thu) 06:09

merryさん、おはようございます!
更新ありがとうございます。

シン君、チェギョンに対し、ひどい事をした令嬢達に厳しい制裁を与えたようねぇ。
流石のユル君も厳しいのではといったみたいだけど。
でも、またこんなことが起こってしまうとねぇ。
見せしめかなぁ?
チェギョンを待っていたシン君。
謝罪し、これからも守っていくと言い放ったみたいねぇ。
でも、何故かチェギョンは婚約事態をお断りしたい旨を・
でも、そんなことを受けるシン君では無いわねぇ。
もう一目惚れしてるシン君だからねぇ・
理性が止まらなかった??
手が早いんだからシン君は。
チェギョンのハートは波打ってるよ、きっと。
何が一瞬にして起こったのかと???

無理のない更新でいいですよ。
次回を楽しみにしています(^^)

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 07:20

To m さま

コメントありがとうございます。

流石のユル君も、未遂なのに実刑と聞いて「厳しい」と言いましたが、今後のための見せしめですもんね。ww
さて、チェギョン、逃げられませんねえ。
キスまでされちゃって〜〜〜〜。(≧∀≦)
うん、OKしたことになりますよねえ。www

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 07:22

To まあむさま

コメントありがとうございます。

そ、チェギョンとしては「早く言わなきゃ!」てもんだったと思いますが、シン君はそう捉えてしまいました。
はい、無理ない。www
チェギョンに想いは・・・・・、届いたかなあ?????(≧∀≦)

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 07:25

To と さま

コメントありがとうございます。

はははっ、若いですからねえ。(≧∀≦)
そうなの、ここまで突っ走られるとチェギョンも辞退しにくい。
おまけに、せっかく決心して言ったのにおかしな風に捉えられちゃって。www
諦めるしかないですね。ww

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 07:27

To tiemさま

コメントありがとうございます。

未遂なのに厳しいかもですが、見せしめですよね〜〜。www
チェギョンがせっかく決心して伝えたというのに、シン君はおかしな解釈をしちゃって、とうとうチェギョンが諦めたようです。
はい、手が早いシン君ですね〜〜〜〜。(≧∀≦)

ありがとうございます〜〜。(^ ^)

ビオラ
2022/08/04 (Thu) 07:39

merryさま、おはようございます。お話の更新ありがとうございます。
チェギョンにすれば婚約を無かった事にして、留学したかったんでしょうね。でも、襲われた事もあって、また誰かに脅されたと思い込んでいるシンくんに伝わりませんでしたね。諦めたチェギョン、ここまで思ってくれるシンくんにとうとう絆されたみたいですね。

-
2022/08/04 (Thu) 08:39

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-
2022/08/04 (Thu) 11:30

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merry
merry
2022/08/04 (Thu) 19:39

To ビオラさま

コメントありがとうございます。

はい、チェギョンとしては決心して言ったはずなのに、シン君は別の意味に取ってしまいました。
絆されたのかなあ???(≧∀≦)

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 19:41

To n さま

コメントありがとうございます。

そうそう、先々のためにも、前例は作っちゃいけません。www
チェギョン、せっかく断ろうとしたのに、シン君ったら都合のいいように受け取ってしまいました。
益々チェギョンを好きになったようで。(≧∀≦)
逃げられませんねえ。www

merry
merry
2022/08/04 (Thu) 19:43

To j さま

コメントありがとうございます。

ナイフを持ってたのはマズかったですよねー。
言い訳が通るはずもありません。
シン君はチェギョンの本心も知らず、いいように解釈しちゃいました。ww
ぷぷぷ、温度差が広がったかな〜〜〜???(≧∀≦)

sai*****
2022/08/04 (Thu) 20:35

こんばんは😊

更新ありがとうございます🎵

シンくんは、チェギョンを襲った、王族の馬鹿娘に対して、厳しい制裁を与えましたね!

障害未遂で執行猶予なしの実刑に…

流石のユルくんも、この制裁に対して厳しいのでは…とシンくんに言いましたが、それでも、『王族なのに、先帝が決めた皇太子の許婚に対して暴挙に出た馬鹿な奴らには、制裁が加えられて当然だ』…とも言っていましたね!

ホント、そうですよねぇ…

チェギョンは、シンくんとの婚約をお断りしたいとシンくんに伝えましたが、逆にシンくんから好きだと告白され、プロポーズを✨

そしてチェギョンにキス💋

シンくんに、プロポーズされて、『俺が守る』、『絶対にお前に手は出させない』…なんて言われて、キスまでされたら、キュンキュンしちゃいますよね😊

お話の続きを楽しみにしています🎵

yurin
2022/08/04 (Thu) 22:34

う~ん、困った?!

こんばんは^^v

シン君にして見れば――
馬鹿娘たちの処分も思うように進み〈よしv-220〉と思っていたことでしょうv-222
珍しくユル君も――
自慢話を中断されても、シン君の手際の良さを褒めてるし(笑)
さぁこれから、と思っていたでしょうねv-222

大きく勘違いして〈プロポーズ〉までしたというのに…
チェギョンから婚姻の件は断ると言われてしまいました。
でも――
シン君は〈全く理解しておらず〉(大笑)

断ったチェギョンなのに――
キスv-207されてしまうし…
さてどうなるんでしょうv-236
お話の続き楽しみにしてますねv-352
今日はありがとうございましたv-354

-
2022/08/04 (Thu) 23:11

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merry
merry
2022/08/05 (Fri) 07:45

To sai*****さま

コメントありがとうございます。

彼女たちも、王族だと言いたいならもっと賢くないとね。www
チェギョン、せっかく頑張って「断りたい」と言ったのにー。
シン君がおかしな解釈をしてキスまでされちゃいました〜〜。(≧∀≦)
諦めたかな?www

merry
merry
2022/08/05 (Fri) 07:48

To yurinさま

コメントありがとうございます。

そ、シン君は「よし!」てもんでしょうし、すっかり舞い上がっています。
チェギョンがせっかく意を決して断りたいと言ったのに・・・、無駄になりましたねえ。www
キスまでされちゃって〜〜〜〜〜。(≧∀≦)
もう諦めるのかな〜〜〜?????www

merry
merry
2022/08/05 (Fri) 07:50

To ふ さま

コメントありがとうございます。

大丈夫、飛んで来ません。
残念ながらこのチェギョンは皇太子相手にそこまで出来ないと思うんですよねー。
ほんと残念!www

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2022/08/05 (Fri) 22:47

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merry
merry
2022/08/06 (Sat) 07:41

To ラプ さま

コメントありがとうございます。

シン君の告白、チェギョンは本気だと判ってくれたんでしょうか?www
キスしましたねえ。
チェギョンはどう思ったかな〜〜???(≧∀≦)

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2022/08/06 (Sat) 23:58

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merry
merry
2022/08/07 (Sun) 06:56

To し さま

コメントありがとうございます。

うちの方は大丈夫でしたが、ワクチンはそうでしたか〜〜〜〜。
私も4回目を終えたんですが、私は「ちょっとだるい」くらいで済みました。
旦那はいつもの如く「何ともない」だったようです。ww
しさまは大変だったんですね。
体調が戻られてよかったです〜。(^ ^)

「チェギョンがおサルに捕獲されてた」に大笑い!!!www
そうそう、チェギョンとしてはこれが最後のチャンスだったかもなのに、勘違いシン君は勝手な解釈しちゃって、とうとうキスまでされちゃいました〜〜〜〜〜〜〜。(≧∀≦)
かなり真剣に告白してくれましたし、このまま受け入れちゃえ!ww
ユル君も出したいし!www

お話 其の伍拾壱(完)