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名無し君は見た!


「あいつ最低!」
「しーっ、ガンヒョン! 皇子のことをそんな風に言っちゃだめ!」
「ヒスンっ、ガンヒョンは皇子だなんて言ってないよ!」


4階から階段を下りようとした時、そんな話が下から聞こえて来た。
どうやら殿下の悪口なので、俺は足を止めてしまった。

すると、話をしていたのは妃殿下、つまり美術科シン・チェギョンの友人たちのようで、殿下の誕生日パーティーに行った時の話だったのである。



カン・インたち御曹司とミン・ヒョリンに馬鹿にされたチェギョンが可哀想だ皇子が悪いんだと、彼女たちは散々殿下を貶していた。


それは、俺の幼馴染も言っていた。
カン・インたちの態度は殿下のせいだというのだ。


まあそういうことだろうと思っていると、別の声が混じった。


「仕方ないよ。 だって結局私が割り込んだ形になったんだもの」


話の内容から、今話したのは妃殿下のようだ。


「でも皇子が承諾しなかったらあんたのとこには話は来なかったんでしょ」


え!
そうなのか!??



幼馴染が言っていた、“ヒョリンの話”とは随分違うようだ。
ミン・ヒョリンはクラスの皆にこう言っているらしい。

『シンがあんな子と結婚したのは断れなかったからよ』



そしてその話が美術科にまで聞こえているようだということに、俺はこの時気付いた。


「ヒョリンって自分のクラスでは、皇子は断れなくてチェギョンを押し付けられた、みたいに言ってるらしいわよ」
「ほんと? あの女も最低ね。 何も知らないくせに適当な嘘吐いちゃって」
「でも皇子がヒョリンにそう言ったのかもしれないわ」


絶対ヒョリンの嘘だ!と幼馴染は言っていたが。


「・・・断れなかったのは本当かもね」


小さい声でそう言ったのは妃殿下だろう。
なんか可哀想だな。


「イマドキ無理矢理押し付けるなんてないでしょ」
「そうそう、皇子はきちんと承諾したのよ。 そう言われたんでしょ?」
「うん・・・」


彼女たちはそんな話をしながら階段を下りているようで、声は少しずつ遠くなった。


「皇子を好きならヒョリンから奪いなさいよっ」
「ガ、ガンヒョンっ!! ///// 」



その声を最後に彼女たちの話は聞こえなくなった。
どうやら2階から1階に下りて校舎を出たようだ。
昼休みだし学食にでも行くのかもしれない。


あんな言われ方をされてる殿下なのに、妃殿下は殿下を好きなんだなと思いながら、俺もやっと階段を下りようとした。
すると、すぐ下の階に人が居たのである。

殿下だった。



殿下はそのまま2階の廊下に入った。
多分3階に居て、彼女たちの話を聞いてから2階に入ったのだろう。





階段で迂闊な話は出来ないなと思いながらも、殿下はどうするのだろうと気にしていると、どうやら次の日にはミン・ヒョリンを切ったようだった。

何故判ったのかというと、ミン・ヒョリンが殿下のクラス、つまり俺のクラスに来て殿下に怒っていたからだ。


「シン、どういうこと? 私たち友達でしょ?」
「妻を笑うような友人は要らないと言っただろう? インたちは反省して昨日のうちにチェギョンに謝った。 勿論俺もだ」

昨日実は俺は早退したのだが、殿下は放課後、ミン・ヒョリンも含めたカン・インたちを諌めたようだ。

すぐに実行に移したということだな。
まあ、あんなことを聞けばな。

「なのに君はどうだ? 今朝チェギョンを見ても謝罪どころか睨んでいたよな。 そんな友人は要らないし、俺は嘘吐きは嫌いなんだ。 何度も言わせるな」
「でも私にプロポーズしてくれたのに!」

プロポーズ!?と、俺も含めてクラスメートたちは驚いたのだが、殿下は一層冷たい空気を纏ったし、カン・インたち3人は呆れたような眼をミン・ヒョリンに向けている。

「それが? 速攻で断ったのは君だろう? 都合の悪いことは忘れたのか?」

断ったのかよ!てか、殿下はほんとに本心からミン・ヒョリンにプロポーズしたのか??

その時カン・インがミン・ヒョリンに言った。

「ヒョリン、もう止めろ。 あのことを言われたくないだろ?」



そしてカン・インがミン・ヒョリンに耳打ちしたことで、彼女はすぐに教室を出て行ったのである。
何を言ってヒョリンを黙らせたんだと騒いだのはチャン・ギョンだった。

「大学生になったら教えるよ」

カン・インはそう答えていた。
だが、そのことは意外にもすぐに判ったのだ。




数日後、校長の校内放送があった。

『先日映像科のクラスで騒ぎを起こした舞踏科のミン・ヒョリンは、本日付を以て学校を辞めることになりました。 1人の方から文書が来ています』

そう言って校長が読み上げた文書の中身は、

住み込み家政婦の娘で私生児のミン・ヒョリンがウチの娘を騙って妃殿下を笑い殿下との嘘をでっち上げたと聞いた、誠に恥ずかしい限りだ、使用人のことをきちんと把握していなかった自分たちも悪い、殿下妃殿下には申し訳なかった、せめて眼に触れないようにヒョリン親子を遠くに行かせる

という内容だった。



学校中の生徒が驚いたと思う。
殿下も知らなかったようで、こういうことかよ!とチャン・ギョンに言われているカン・インを、ぼうっと見ていた。

殿下は人を疑うことを知らないのだ。
そういうところが皇子さまだな。




だが、どうしてあのことがミン家にバレたのだろうと思っていたら、幼馴染が尤もらしいことを言った。

「映像科で随分騒いだらしいじゃないの。 腹に据えかねた誰かがミン家の人の耳に入れたのよ、きっと」
「・・・もしかしてお前が?」
「すごーーく残念だけど私じゃないわ。 私なら門前払いされるだろうし」

あ、それもそうだ。

「とにかくヒョリンは調子に乗り過ぎたのよ。 馬鹿な女だわ」

幼馴染は、清々したようにそう言った。
そういうことだな。





そして殿下はというと、ミン・ヒョリンへのプロポーズは本気じゃなかったんだなとしか思えないほど、妃殿下を大事にしている。
見つめる眼が優しくて、演技には見えない。

「本気みたいよ。 この前チェギョンに平謝りしてる皇子を見たって子が居たわ」
「平謝り??」
「ただの友人だとしか思ってなかったヒョリンにはプロポーズしたのに、チェギョンにはしてないのか!ってガンヒョンたちに言われたらしくて、そのことを謝ってたんだって」

あれはただの提案だったんだ、でもお前にはきちんと心を込めてプロポーズするから、指輪も注文してるからと、チェギョンに縋るように宥めるように必死に謝っていたそうだ。


そして今日、妃殿下の指には指輪があるらしい。

「・・・お前よく見てるな」
「私は馬鹿なヒョリンと違って友達が多いのよ」

だからそこら中から情報が入って来るというのだ。

「だって私は賢くて可愛いものねっ」
「・・・」






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