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振り回された御曹司


タイでの一日目を終えてほっとしていた時、隣の部屋に居たコン内官の、驚いたような声が聞こえて来た。

「え! 本当か、チェ尚宮!」

チェ尚宮?
チェギョンに何かあったのか?

「それで妃宮さまは・・・、うん、・・・そうか、ならば良かった。 お傍を離れることのないように。 学校内にも翊衛司を入れなさい」

なんだ?




その後コン内官を問い質すと、チェギョンがユルと何処かに行ったらしく、戻ってから母上に叱られたそうだ。

「自分が連れ出したのだからと義誠君さまが庇われたそうですが、そのことで尚更お叱りを受けられたそうで・・・」
「・・・」


母上のことだ。
自覚がないだの妃宮としてなってないだのと言ったに決まっている。





その夜、チェギョンに電話してみたが出なかった。
携帯を置いて何処かに行ったのかと尚更気になってチェ尚宮に電話すると、チェギョンの携帯は充電中だとのことだった。

「チェギョンはどうしていますか?」
『・・・泣いていらっしゃいましたが、今は落ち着いておられます』
「・・・そうですか。 朝電話すると伝えておいてください」
『はい、殿下』





その夜俺は、1人反省した。

此処に、タイにチェギョンと一緒に来るべきだった。
そうすればチェギョンはユルと出かけなかったし、母上に叱られることもなかった。

俺が変な嫉妬でチェギョンを置いて来たからだ・・・。




俺は、落馬した時ユルのところに行ったチェギョンを許せなかったのだ。

お前は俺の妻だろう。
なのにユルを優先するのか?


あまりに腹立たしかったのと、母上がイギリスの王子の接待をチェギョンには任せられない無理だと言っていたのを聞いて、見返してやれたらと思いチェギョンを置いて来たのである。

なのに東宮殿を出る時は変な怒りが勝ってしまい、チェギョンに何も言わずに出て来てしまったのだ。

それがマズかった。
あの時、「行って来る、お前も頑張れ」と何故言えなかったのか。



俺はこの時になってやっと、自分の気持ちに気付いていた。
あの変な怒りは嫉妬だったのだ。

俺はチェギョンを好きになっている。
だからユルと居ることが許せなかったのである。


だが、チェギョンがユルを頼ったのは俺のせいだ。
俺がいつまでもヒョリンを切れないから。


ごめんチェギョン。
だがもう大丈夫だから。
これからは俺がお前を守るから。



すぐにヒョリンの番号を削除してから、今度はチェギョンに言う言葉を考えた。

ウイリアム王子の接待はお前が適任だ、普段通りに振る舞えばいい、お前なら大丈夫だ、俺も頑張るから。

そう言おう。
絶対そう言ってチェギョンの不安を取り除かなかればならない。




そして朝、無事それを言うことが出来たので、少しチェギョンの声が明るくなったように思う。

「夜また電話する」
『うん、ありがとうシン君。 頑張るね』

素直なチェギョンが可愛い。





次の日、ラーマキエンの鑑賞を終えると会見まで時間があるので、その間にチェギョンへの土産を選ぼうと思っていた。

何にしようかと色々考えながら舞台に見入っていると、キム内官が耳打ちして来た。

「(殿下、携帯に着信があります)」
「(放っておいてください。 こんな場で出るつもりはありません)」


チェギョンかもしれない。

そう思ったのだが、終わってからすぐに確認すると登録していない番号だったので放っておいた。



その後部屋に戻ってから再び着信があり、今度はインだった。
何だろうと出てみたらヒョリンだったのである。

「インの携帯では?」
『あ、実は私の携帯が壊れたからインのを借りて来たの』

1人でタイに来ているそうだ。

『さっきラーマキエンの会場の中庭に居たのよ。 シンったら全然気付いてなかったけど』
「何? あの場所に居たのか? どうやって入った?」
『え・・。 ふ、普通に入れたわよ。 ねえ、それより、私今あなたが居るホテルの中庭に居るの。 出て来て、お願い』
「・・・そこで待ってろ」


すぐに電話を切り、俺はコン内官に言った。

「先程のラーマキエンの会場に一般人が入り込んでいたようです。 タイの警備はどうなっているんでしょう。 それとこのホテルの中庭に同じ人物が侵入しています。 捕らえてどうやってラーマキエンの会場に入ったのか、何故このホテルを知ったのか尋問してください」
「はい、殿下!」



コン内官はテキパキと指示を出し、ヒョリンはすぐに拘束された。
彼女の周りはガタイの良い翊衛司が取り囲んでいて、そのことにビビったのか、ヒョリンは何もかもを白状したのである。

インたちも来ているらしい。

「インがあなたの予定を調べてくれたのよ。 ラーマキエンの会場にも入れるようにしてくれたわ」
「このホテルにも?」
「・・・ええ」

コン内官に目線で合図をすると、彼はヒョリンの眼の前で2人の翊衛司に指示を出した。

「カン・イン、チャン・ギョン、リュ・ファンを連れて来るのだ。 すぐに」
「はい!」

コン内官がインたちの名前を知っていたことに、ヒョリンは驚いているようだった。

「君はさっき俺に1人で来たと言ったが、嘘だったんだな」
「だ、だって、私の携帯だったから出てくれないのかと思ったのよ!」

だからインの携帯で電話したものの、番号でバレたので、咄嗟にあんな嘘を吐いたらしい。

「君の番号は削除した。 知らない番号だから出なかったんだ」
「え・・・」



インたちは大人しく連行されてやって来たが、ギョンだけがヒョリンに食って掛かった。

「お前、シンに呼ばれたなんて嘘だったんだな! 大嘘吐きめ!」



その後4人は、俺からの要請で、タイ政府によって強制帰国させられたのである。





そしてその措置によってその後ヒョリンの素性が判明し、正直すごく驚いたが、学校側の措置で4人が停学処分を受けたことやヒョリンがミン家を追い出されたことなど、もうどうでもいい。

それより俺とチェギョンだ。


俺たちは、俺がきちんと謝って自分で選んだ土産を渡したことで一気に距離が縮まった。
チェギョンは元々素直なので、俺が歩み寄ればきちんと受け止めてくれるのだ。


「次は一緒に行こう」
「うん」






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