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花嫁の資格 14


「こんなにたくさんいただけません」

私の誕生日に、ヘジャさんたちは驚くほどのプレゼントを用意してくれていた。
こんなにいただいても、お返しすることも出来ないのに。

気にするなと言われても気になってしまう。
でも、どれもこれも綺麗で素敵な物ばかりで、それは嬉しいと思う。

ヘジャさんやユソンさんの気持ちも嬉しいし、私たちがお祝いしたいのよという言葉は、素直に有り難いと思う。

「ありがとうございます」

頭を下げた私に、皆さんの優しい視線が注がれる。



こんなによくしてもらっていいのだろうか、もしかしてこのことでアジョシとのことを再び断ることが出来なかったらどうしよう。

一瞬そういうことが頭を過ぎったのだが、私の傍に居たヘミョンさんが耳打ちしてくれた。

「(チェギョン、私たちはあなたを縛ろうと思ってるわけじゃないの。 シンみたいなおじさんのことなんか気にしないでね)」

顔に出ていたのかと思わず頬を押さえてしまったが、ヘミョンさんは私の頭を撫でてくれた。

「私たちはあなたの気持ちを1番に考えてるの。 だから大丈夫よ」
「・・・ありがとうございます」

にこっと笑ってくれたヘミョンさんはとても綺麗だった。




アジョシからのプレゼントの万年筆を見て、スニョンが怒っていたのを思い出した。

『パパったら万年筆なんて私にくれるのよ! ほんっと中年のおじさんだわっ』

お礼を言いながらも笑いたいのを堪えていると、お花が届いた。




「シン、これフラワーフレームアートってヤツね!」

こういう物があるのかと、ぼうっとそれに見入っていた時、ヘミョンさんがそう言った。
そういう名前も初めて聞いたが、それはとても綺麗だった。

「ありがとうございますっ。 素晴らしいです、初めて見ました!」

すごく嬉しくて、アジョシに初めて心からのお礼が言えた。




その後皆でゲームをした。
こういうゲームは施設で何度もしたので、懐かしくて楽しかった。





「チェギョン、またね」

皆さんが帰る時、ヘミョンさんがそう言って私にハグをしたことで、全員とハグをした。
ありがとうございましたと言いながら皆さんの背中に手を回して、最後はアジョシだった。

この中の誰よりも背が高いので、私の目線はアジョシの胸だ。
そっと背中に回された掌がすごく大きくて、先程の万年筆のこともあり、父親のようなイメージを持ってしまった。

お父さんってこんな感じだろうか?

そう思ったせいか、アジョシの胸は安心出来た。






6月になり、高校に教育実習の先生がやって来た。

「イ・ガンヒョンです。 英語を担当することになりました。 よろしくね」

さらさらのロングヘアーを1つに纏めて眼鏡をかけた、色の白い可愛い先生だった。




「ねえ、あなたがチェギョンなの?」

イ・ガンヒョン先生にそう話しかけられたのは、次の日の昼休みだった。
イ先生はクラスメートのイ・ユル君の従姉妹だそうだ。

「ユルに聞いたの。 チェギョンはすごく絵が上手だって。 ねえ、画家を目指してるの?」
「いえ、まさか」

その時傍に居たスニョンが、身体を乗り出すようにイ先生に言った。

「すっごい上手なんですよ〜。 先生からも画家を勧めてくださいっ」
「スニョン!」


そんなつもりはさらさら無い。
夢を持ったこともなかった。
というか、それ自体が私には贅沢だったのだ。

とにかく高校を卒業したら就職して自立したい。
それだけだ。



だがこのことで先生に、次の休みに美術館に行こうと誘われた。
今その美術館で○○特別展が開催されていて、画家云々よりも、本物の絵は見るだけで勉強になるからと言って。

絵は好きなので美術館も好きだ。
そういうところは中学の社会勉強以来なので、ソウルの美術館に興味があって、行きますと返事をした。





「まあ、教育実習の先生と美術館?」
「はい。 次の休みに行って来ます」

その日の夕食時にはアジョシも居たのだが、私はそれをユソンさんに伝えた。

「美術館で待ち合わせなの?」
「はい。 バスで行って来ます」
「気を付けるのよ」
「はい」



ただの食事中の話題のひとつだったのだが、当日アジョシが迎えに来てくれたのである。


「行ってらっしゃい〜」


変にテンションの高いユソンさんに押されるように、アジョシと一緒にエレベーターで地下駐車場に向かった。
助手席はマズイかと後部座席に乗ろうとすると、アジョシが不機嫌そうに言った。

「俺はお前の運転手じゃないぞ。 隣に乗れ」
「あ、はいっ」

ああ、そう言えばドラマとかで社長さんは後ろに乗ってるなと思いながら、私は慌てて助手席に乗った。




「・・・」
「・・・」

アジョシは何も言わないし、私も何を言っていいのか判らない。
なので帰りのことを口にした。

「あの、帰りは先生と一緒なのでバスで帰ります」
「送ったらさっさと帰れってか?」
「い! いえ、そんなつもりは・・・っ」

どうしようと内心おろおろしていると、アジョシは表情も変えずに言った。

「冗談だ」
「・・・」

もう、どうしていいのか判らない。




美術館に着いてアジョシにお礼を言って車を降り、入り口に向かうと、ユル君が手を振っていた。

「やあ、チェギョン」
「ユル君? どうしたの?」
「ヌナに誘われたんだ。 でも僕が思うに、入館者数を増やしたいだけだよ、きっと」
「まさかー」

なのに肝心のヌナがまだだとユル君が言った時、誰かが私の名を呼んだ。

「チェギョン」

アジョシだった。





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