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花嫁の資格 13


『ねえねえ、シンはチェギョンへのプレゼントは何にしたの?』

姉が嬉しそうに電話をかけて来た。
当日は家族4人でマンションに行くらしい。

姉と義兄は二人で、少し早いけどと言いながら大学入学式用のスーツだそうだ。
別々のプレゼントだと気を遣うだろうからと。

『まだまだ私たちに遠慮してるものね。 だからあまり高価なものにしないでおこうと思って』

そう言いながらも、数百万ウォンのブランド物だそうだが。


『で? あなたは何をプレゼントするの?』
「万年筆だ。 必要になって来るかと思って」
『はあ!???』

眼を吊り上げた姉の顔が浮かぶような声だった。



なんで万年筆なんだ、あんたは女の子にそんな物を贈るのか、親戚のおじさんじゃないんだからもっと気の利いた物にしろ!!!!!

と、マシンガンのように捲し立てられて、花束も用意しろと言われた。
だが、すごーく質の良いブランド物の万年筆なんだが。

『あんたはそんなだから結婚出来ないのよ!!!』

母と同じような捨て台詞を吐いて、姉は電話を切った。






「おめでとう〜〜〜〜〜!!!」

母たちの声が揃って、チェギョンの誕生日パーティーが始まった。


テーブルには料理が所狭しと並べられていて、その横にはプレゼントが積まれている。
姉たちからのスーツはハンガーにかけられていた。

「こんなにたくさんいただけません」

チェギョンは恐縮しているが、周りの祖母たちは平気だ。


祖母たちは金に飽かす、なんてつもりはないだろうが、チェギョンはそう感じるのかもしれない。
気にするなと言っても、育って来た環境が環境だから、慣れるのは難しいだろうし。


俺の前で大騒ぎしている祖父母と両親、姉一家を見て、俺は一人そんなことを思っていた。
父は祖母たちに引き摺られるように此処に来たのだが、既にチェギョンを俺の嫁として認めているフシがある。
まあそれは、例のことがあったからだろうが。



そして当のチェギョンはと言うと、母ではないが確かに可愛くなった。

訛りも随分抜けて来ているし、食事マナーは元々出来たし、これなら俺の婚約者として何処かに連れて行っても大丈夫かもと思えた。
いや、チェギョンにはその気はないだろうが、それくらい垢抜けて来たということだ。

ありがとうございますと言って眉も頭も下げていながらも、嬉しそうなのが、また可愛かったりする。





「シン・・・、あなたこんな物を・・・」

俺からのプレゼントを見て、呆れたような声を出したのは母だ。
万年筆のどこが“こんな物”なのかと思うが、女性から見れば万年筆は有り得ないようだ。
そうか??

「もうすぐ花も届きますよ」

溜息混じりにそう言った時、届いたと連絡が来て、面白がった義兄が受け取りに行ってくれた。





「おお、なかなか立派な物だ」
「こんな物があるのね〜」

祖父は頷いているし、祖母はそれをしげしげと見ている。
その横で姉が声を上げた。

「シン、これフラワーフレームアートってヤツね!」
「ああ。 綺麗だろ」

額縁の中に花があるのだ。
生花ではないので水やりの必要もない。

チェギョンは声もなくそれに見入っていたが、嬉しそうな顔で俺を見上げた。

「ありがとうございますっ。 素晴らしいです、初めて見ました!」

先程全員に頭を下げて礼を言ったのよりももっと嬉しそうな笑顔だった。
とても眩しかった。




チャンとゴンが居るので、姉夫婦とチェギョン、それに俺も混じって20数年ぶりのゲームをした。
少し、いや、かなり楽しかった。
童心に帰るというのはこういうことかと思ったくらいだ。





ケーキを食べてお開きになり、母とチェギョンが玄関で俺たちを見送ってくれた。

「チェギョン、またね」
「今日はありがとうございました」

この時姉がチェギョンとハグをしたことで、祖父も祖母も、儂も私もとチェギョンとハグをして、姉に促されて義兄も父もハグをしていた。
チャンとゴンはチェギョンに抱き着いている。


その後、祖母たちがじーーーーーーっと俺を見るので、嫌がられないかと思いつつ、俺もチェギョンの身体にそっと手を回した。

「ありがとうございました」

その言葉とともに俺の背中に小さい手が触れて来た。
俺の胸までしか背がないチェギョンは、いい匂いがした。






・・・なんてことのない、ただのハグだった。
抱き締めたとか、そういうことではなく、ただの挨拶だったのだ。

が。
いつまで経ってもチェギョンとのハグの感触の記憶は、薄れることがなかった。

祖父たちに向けたのと同じ笑顔と言葉だったのに、義兄の背中にもその手は回っていたというのに。
あの時のチェギョンの笑顔は脳裏に焼き付いているし、小さい手が触れた背中は今でも熱い。

・・・あまりに久々に若い子に触れたからだな。



俺はそう結論付けた。
最近女性からも遠ざかっているので、そのせいもあるだろう。

仕事が忙しくてそんな時間が取れないこともあるが、特に時間を作る気もない俺は、チェギョンの感触を振り払おうと頭を振った。




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