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参拾伍 13(完)


『私はヒョリンに騙されていました。 高校生に騙されるなんてお恥ずかしい限りですが、事実です』

『騙されていたというのは、彼女が嘘を吐いていたということですか?』
『どんな嘘ですか?』

『自殺は狂言だったんです! 呆れました!』


ミン家当主は、馬鹿な自分がしたことで国中を振り回した、申し訳なかった、嘘吐きのヒョリンとの縁は切った、皇室にも皇太子ご夫妻にも多大なご迷惑をかけたとテレビカメラの前で謝罪して、なんとその日のうちに海外に行ってしまったのである。

当然ヒョリン母娘は放り出された。



ネットでは、

『結局ミン・ヒョリンは大嘘吐きだった。 狂言自殺までしようとして何が残ったのか』
『こんな女に振り回された国民もミン家も大馬鹿だ。 そのせいで皇太子夫妻は離婚してしまった。 国民はこの始末をどう付けるつもりなんだ』

こんな声や、

『皇太子殿下や皇帝陛下の会見を歪曲して大騒ぎした結果がこれだ! 同じ国民として恥ずかしい!』
『世界は私たちを笑っているだろう。 本当に恥ずかしい』

などという声が上がり、それらは国中を飲み込んで、テレビも新聞も一斉に、私たちが騒ぎ過ぎたと謝罪して、一気に騒動は萎んでしまった。





「え? お前たちがミン家に??」
『ああ。 絶対に知らないと思って』

インたちがミン家当主にヒョリンの狂言自殺を教えたらしい。
病院長の証言と書類まで見せて。

『高校生3人じゃ信用してもらえないと思ったから、親父たちに動いてもらったんだ』

インたちのご両親も、皇室がこんなことになっていることに心を痛めてくれていて、何とかなればと思ってくれていたそうだ。

『一応俺たちのとこって大企業だろ? そこの社長たちの話だからミンさんも信用してくれて、カメラの前で謝罪するって約束してくれたんだ』

まさかすぐに海外に行くとは思わなかったけど、とインは続けた。


「ありがとう、おかげで助かった」
『いいって! で? 離婚は撤回出来るんだろ?』
「いや、一旦手放す。 再びチェギョンを迎える時にはもっとクリーンな宮にしておきたいんだ」

俺の言葉に、インは「そっか」とひとこと呟いた。






いよいよチェギョンたちが出国する日になった。
国民は、ヒョリンたちや世論に踊らされたことを反省してくれているようで、比較的静かに行けることは良かったと思う。

こっそり見送りに行くと、インたちやチェギョンの友人たちも居た。
彼らはあれから親しくなれたらしく、今も和気あいあいと楽しそうだ。

チェギョンとの離婚をマスコミにリークした王族のことは、テレビ局が録音していた音声のおかげで声紋鑑定の結果を待つだけだ。
もうすぐ判明するだろう。




空港で、インたちやシン家のご家族から離れて、俺はチェギョンと向き合っている。
昨夜初めて結ばれたこともあり、正直なところ離れがたいが、暫くの辛抱だ。

「俺が迎えに行くまで待っててくれよ。 そんなに時間はかからないから」
「うん」

せめて頬にキスをと顔を寄せた時、チェギョンが俺の耳にあるイヤホンに気付いた。

「それは? 音楽を聴いてるわけじゃないんでしょ?」
「勿論。 これは翊衛司との連絡用だ」

そう答えた時、イヤホンから声が聞こえて来た。

『殿下、ミン・ヒョリンが空港に現れました』




その後はあっという間だった。
ヒョリンは小さなナイフを持っていて、チェギョンの名を叫びながらも別の女性に突進して行ったのだ。

「シン・チェギョン! あんたを許さないわ!! 何もかもあんたのせいよ!」

眼を釣り上げたヒョリンが走った先には、高校でのチェギョンのようにお団子ヘアの女性が居て、その人をチェギョンだと思い込んだようだった。



周りが騒然となる中、当然のように翊衛司に拘束されたのだが、それでもヒョリンは叫んだ。

「あはは! シン・チェギョンを刺してやった! 死ねばいいんだわ!」

実際にはヒョリンが持っていたナイフはその女性に当たることもなかったのだが、ヒョリンは髪を振り乱して狂ったように笑っていたのだ。





その後、<気狂い女ミン・ヒョリン!>という見出しのニュースがテレビと新聞、ネットにも出て、皇太子殿下もチェギョンさんも気の毒だ、皇室はいい迷惑だったと一旦は騒がれたが、以前のようにはならず、2日ほどで沈静化した。

高校生に振り回されるなんてという声もあったが、それらもすぐに消えてしまった。




誰を刺したわけでもなく、ただ騒ぎを起こしただけのヒョリンは、その後地方の精神病院に入った。
母親も近くに越して来たらしい。


声紋鑑定でリークした王族と、ユルたちと繋がっていた王族が判明し、身分の剥奪などの処分を経て、王族会も一掃された。
そのことで不満を口にする者はなく、少し綺麗な宮に近付けたかと思っている。




追尊が終わってユルたちがマカオに行く時、ユルたちがしていたことは結局国民には公表されなかった。
これ以上国民を刺激しても、いいことはないと判断したからだ。

ユルとソ・ファヨンさんは、ひっそりと韓国をあとにした。
生涯帰国は許されない。





そして夏休み、俺はイギリスに行ってチェギョンにプロポーズした。
勿論OKだ。

父上も母上も全員で真摯に公務に取り組み、2年後、俺たちが大学2年の冬にチェギョンは帰国した。
勿論俺の妃として。









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