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参拾伍 11


シン君の会見のあと、二人で上殿に呼ばれた。

真摯な会見だったせいか、陛下の態度は軟化していたように感じた。
会見前に家族を呼んでくれていたことは素直に嬉しく、皆さまが謝ってくださったことにもきちんと挨拶出来たと思う。

ヘミョンさまの言葉に含みを感じてしまったが、もういい。
もうすぐ離婚するのだから。



今夜からご家族と過ごしなさいと言ってもらえて、私は部屋を辞してから上殿の一角に居る家族の元に向かった。




「チェギョーーーン!!」

部屋に入るなり父が飛び付いて来て、後ろに居るチェ尚宮さんに恥ずかしいほどだったが、でも抱き締めてもらえて嬉しかったのは事実だ。

私も家族も、出国するまでずっと此処に居ることになる。
準備は出来ていたので、宮から迎えに来てくれた時にはいくつかの手荷物を持つだけで家を出られたらしい。

「これからは一緒に居られるわね」
「うん、ママ」

せめて、それだけは良かった。



その夜は久し振りに夢も見ずにぐっすり眠れた。
ということは、ここ最近気を張っていたのだろう。




朝になり、挨拶はいいと言われていたものの身支度だけ済ませて、宮の朝食だと喜んでいるチェジュンを諌めながらも待っていた時、シン君がやって来た。



「申し訳ありませんでした。 私の短慮のせいで、皆さんを遠くに追いやるようなことになってしまいました」

シン君がそう言って家族に謝った時、皇太子が頭を下げるなんてと、驚きしかなかった。
父たちもそうだったようで、3人とも慌てながらも大丈夫だと言ってくれて、私の方がほっとした。



その後、私はシン君と向き合ったのである。



「俺は、お前が好きだ。 愛している」

シン君は真摯に告白してくれた。

「信じられないのは判る。 だが本当だ」

本当?

「俺はもう一度お前と結婚したい。 お前がいい。 お前でないと俺は俺でなくなる」

この言葉は嬉しかった。

「俺を待っていてくれ。 人間としてもっと大きくなってもっと頼りがいのある大人の男になって、お前を迎えに行くから。 誰のものにもならずに、俺を待っていてくれ。 頼む、チェギョン」
「シン君・・・」

私の眼を見て、真剣に懇願するように迎えに行くと言ってくれたことは、素直に受け止められたしすごく嬉しかった。
会見も、本当は信じたかった。
だがヒョリンの存在がそうさせてくれなかったのだ。

でも今は、シン君の気持ちを信じることが出来る。




初めてのキスはドキドキして、でもこれが最後かもと悲しくて、でも嬉しかった。
ありがとうシン君。
私もシン君が好き、愛してる。



未来の約束は私に希望を齎した。
もしそれが叶わなくても、シン君を好きになった自分を忘れずにシン君を胸に秘めて、生きて行けると思う。

いや、シン君は迎えに来てくれる。
私は待っていればいいのだ。





でもその日の午後、ヒョリンが自殺を図った。
幸い命は取り止めたそうだが、ヒョリンの自殺未遂は衝撃だった。

それほどシン君を好きだったのだろうか。
でも命を粗末にするなんて。


私は、死ぬするくらいならどんなことをしても生きて行けると思う方なので、自殺など考えられない。
なのでヒョリンの気持ちは判らなかったが、気にはなるし心配だ。

お見舞いに行くべきだろうか?
私が行っていいものかとも思うが、シン君はどうするのだろう?



行くことも出来ず、然りとてシン君に電話して行くのかと聞くことも出来ずにいると、漸くシン君から電話が来た。
が、見舞いには行かないと言う。

でも、シン君の会見がショックだったのかもしれないのに。

なら代わりに私がと思ったが、行くなと言われた。
マスコミが張り付いてるとか聞くと、それもそうかと思う。
自殺しようとしたヒョリンを放っておくのはどうかと思うが、勝手に行くことも出来なくなった。


結局私は、どうすることも出来ずにいたのだ。




そして次の日にはヒョリンが飲んだ睡眠薬はユル君が渡したものだと判ったらしい。
ヒョリンは本当に死ぬ気などなく、狂言自殺だったそうだ。

「ユル君が薬を・・・」

チェ尚宮さんから聞いたことに茫然としていると、シン君から電話が来た。


『お前ユルから何か聞いていないか?』

何かとはヒョリンのことらしいので、私は正直に話した。
シン君の誕生日や生卵をぶつけられた時にユル君に言われたことを。
ユル君は、シン君とヒョリンのことを本当によく知っていたから。


するとシン君は電話の向こうで叫んだのである。

『ヒョリンは結局俺のことなんて全然理解してないし、お前はどストライクで俺の好きなタイプだ!!』


必死なシン君の言葉がすごく嬉しくて、つい笑みが零れた。

シン君を信じる。
私に出来るのはそれだけだ。





その後皇女さまが私のところに来てくれて、シンの気持ちを見誤っていた、悪かったと謝罪してくれた。

「いいえ、いいんです。 皇女さまがそう思うのも当然です」
「そんな風に言わないで〜〜〜。 余計に辛いわ〜・・・」
「あ・・・っ、すみません・・・」


このことで、皇女さまと分かり合えたように思う。
以前は大人ぶってるように感じたが、こうして向き合うと皇女さまも女の子なのだ。


「離婚発表がずーーーーーっと延期になって、ナシになればいいわね。 シンもそうなるといいって言ってたわ」
「はい」



ところが今度はヒョリンのお母さんが自殺しようとして、そのことでミン家のご主人がヒョリンを養女にしたのである。

『ヒョリンはもう私生児ではありません。 私の娘です。 ミン家の娘です!』


もう、何がどうなって行くのか判らなかった。

 



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