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参拾弐 14(完)


「え? ユル君がイギリスに??」

私はそれをジョンファから聞かされた。
皇太后さまの独断で留学することになったらしい。

「随分急なのね」
「知らないの? 彼、あなたを自分の妃にして欲しくて陛下に勅命を出してくれって頼んだのよ」
「はああ???」


なんと、ユル君はイン君が私に告白したのを見ていたようで、私を取られまいとしたらしい。
そのことで、チェギョンの気持ちはどうでもいいのかと皇太后さまが怒ったそうだ。


「ぜ、全然知らなかった・・・」
「で、チェギョン。 まさか残念だと思ったとか」
「いや、それはない」
「言い切るねえ」

ジョンファが大笑いしていた。




彼女は最近すごーーーーーーーく機嫌がいい。
というのは、ジョンファの彼であるヘジンさんが、とうとうと言うかやっとと言うか覚悟を決めたようで、ジョンファのご両親に挨拶したそうだ。

『結婚を前提にお付き合いさせていただいています!』



「オッパったら、すっっっっっごく!! 素敵だったの〜〜〜!!!」

と、ジョンファは今、お花を撒き散らしているというわけだ。

でもご両親には、“反対はしないがジョンファは一旦殿下たちのお妃候補になったから周りに付き合いがバレるのはマズイ”と言われたそうだ。


「どういう意味?」
「揀擇なんて昔風のことをしたからよ。 候補に挙がった娘は皆皇子の女ってわけ」
「えええ!???」
「だから! 一日でも早く、せめて婚約してもらわないとね〜。 チェギョンと」
「なんで私っ」
「よく言うよ、お互い好きなくせに」
「違うってば!」
「はいはい、あんたも素直じゃないもんねー」
「・・・」



何故かジョンファには私の気持ちが透けて見えるようなのだ。


シン君からの電話は時々、ううん、ごく偶に、になっている。

昔のことをずっと気にして謝ってくれたというのに、揀擇が終わったからと放置なんてどういうつもりなんだか。

が、そんな風に怒ってることを知られたくなくて、私はジョンファの前では特に平然としている。
なのに。

「殿下から電話が来なくて寂しい?」
「何でよっ」
「顔に書いてる」
「まさかっ」

と、何故か言い当てられてしまう。

「殿下が好きなら素直になればいいのに」
「嫌いじゃないってだけよ」
「無理しちゃって〜〜〜」

無理してないもんっ。

ジョンファの周りは花だらけだからと、それを私にも撒こうとするのは止めて欲しい。



お花と言えばガンヒョンも同じだ。
ギョン君と付き合うことになって、ガンヒョンは照れが勝つのか私たちの前では素っ気ないのだが、ギョン君の喜びようときたら・・・。
真っ赤な顔でガンヒョンが怒るのも判る気がする。





そして夏休みになって、シン君からは電話も来なくなった。
私からかける気はないが、一切無いというのが何故か腹が立つ。
一応妃候補だったんだから、少しは気遣いというものを持てないのかと思ってしまう。

でも、そんなことは絶対に誰にも言わない。





そんなある日、私とガンヒョン、嬉しそうなギョン君、引っ張られて来たイン君の4人は、今王立小学校のグラウンドに居る。
明後日の日曜日、此処で地域の住民たちによる音楽祭があるそうだ。

いや、音楽祭というのは聞こえが良すぎる。
素人が集まって“のど自慢大会”があるということなのだ。

とにかく、その準備に私たち高校生や大学生のボランティアが駆り出されたというわけだ。




ギョン君とイン君たち男性が舞台の設置をしていて、私たち女性は周りの清掃をしていた。
最後に飾り付けをする予定だ。


「ガンヒョン、先にこれを捨てて来るから」
「うん、お願いチェギョン」



いっぱいになったゴミ袋を手に焼却炉に向かい、元の場所に戻って来ると、何やら大勢がざわざわ騒いでいるようだった。
何かあったんですか?と近くに居た顔見知りの人に聞く前に、その人が私に気付いた。

「チェギョンが戻って来たわ!」
「え??」

その声に私の前の人だかりがパクっと割れて、両側に人が立って真っ直ぐ道が出来てしまい、なんとその向こうには薔薇の花束を持ったスーツ姿のシン君が立っていたのである。




にこやかに真っ直ぐ私の前に来たシン君に、つい顔を顰めたくなる。
目立ちまくってめちゃくちゃ恥ずかしい。

「・・・何してるの、シン君」
「お前に告白しに来た」
「はあ??」

そんな格好で!?? /////////
今此処で!??? ////////


嘘でしょと思いたい私の前で、シン君は花束を持ったまま真剣に私を見つめていた。

「俺お前が好きだ。 小さい頃からずっとお前だけだ。 そしてそれはこれから先もだ。 チェギョン、俺との未来を考えて欲しい。 一生お前だけを愛すると誓うから」
「・・・・・ /// 」

これでは、告白どころか公開プロポーズだろう。


はっきり言ってシン君はかっこいいと思っていたし、今のこの姿も素敵だと思う。
でも。


シン君ってば周りが見えないわけ!?
この大勢の中でよくそういうことが出来るわね!?



馬鹿ーー!と叫びたいのを堪えている私の肘を、ガンヒョンが突付きに来た。
ギョン君はニヤニヤしているし、イン君は苦笑いしていた。

「(チェギョン! 返事しなさいよっ。 皇子ったら薔薇を差し出して待ってるじゃないのっ)」
「・・・」

確かにシン君は微笑みを浮かべて花束を私のほうに差し出している。
携帯で動画を撮ってる人も居るし、今私が怒るのはマズイ。



「殿下、今から宮にご一緒します。 お返事はその時に」

にっこり微笑んでそう言うと、シン君はパアッと顔を輝かせて、判った!と言うなり私の手を取りに来て、私とシン君は大勢のボランティアに冷やかされながら小学校をあとにした。

手を繋いで、だ。
私の内心の溜息は動画には映らない。


 



「どういうつもり!?? あんなに人が多いところであんなこと言うなんて! 馬鹿じゃないの!?」

車に乗るなり私に怒鳴られたシン君は、若干腰が引けていた。

「・・・早いほうがいいかと思って。 それに俺午後は公務があるから・・」
「午後公務!? それって最悪!」

今のことはすぐにネットに上がるだろうし、シン君が公の場に現れれば、返事はどうだったのか聞かれるに決まっている。

それを言うとシン君は、あろうことか喜んだのだ。

「OKしてくれたって言っていいか?」

隣で嬉しそうに笑うシン君が悔しいことに可愛くて、つい“うん”と言いそうになってしまった。
が、公衆の面前で告白した皇太子が振られたなど韓国の恥だ。


実は、突然過ぎて驚きながらもシン君の告白が嬉しいと思ってしまっているのは事実なのだ。
悔しいことに。

ほんとに悔しいことにっ。



「・・・・・いいわ」
「ありがとう、チェギョン!!」

運転席と助手席に翊衛司のお兄さんが居るというのに、シン君は大きな声でそう言うと私を抱き締めた。

「嬉しいよ、チェギョン! 大好きだ!!」
「・・・ ///// 」


シン君が言うには、つい先日まで自分の気持ちがよく判らなかったらしい。
でも、ユル君やイン君のことがあって、チェギョンを好きなのかと思っていたようだ。

そんな時ジョンファの彼のヘジンさんに、迷惑してるからさっさと婚約しろと言われ、とある一人のおじいさんの言葉で、漸く私への告白を決心したそうだ。



皆に背中を押されないと告白も出来ないのかと、あまりのヘタレ具合に溜息が出そうだ。
でも、こんなに喜んでくれるならまあ良い。

シン君からの告白が嬉しくてプロポーズに気分を良くしていた私は、その時車の中でのキスを受け入れてしまったのだ。





すると。

シン君は午後の公務先でマスコミに掴まった時、カメラの前で嬉しそうに言った。

『OKしてもらえました! キスもしました!』



馬鹿ーーーーーーーーーーーーー!!! ////////







その後。
シン君の言葉に大笑いしたらしい皇太后さまによって、私とシン君は、文字通りあっという間に婚約した。


「おめでとう〜〜〜〜〜!!!」

ジョンファが大喜びしたことは言うまでもない。










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