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参拾弐 13


オ・ヘジンの実習が終わって、俺を睨み付けながら彼が行ってしまった後、気付くと夏休みになっていた。

俺は一層公務が増えて忙しくしていて、そんな中、ボランティア先の老人施設で一人の職員が入居者の老人に言われていた。

「何をいつまでもうじうじしている。 あんたはそんなに自分に自信がないのか?」
「・・・そういうわけじゃなく、彼女の気持ちが判らないんです」


所々聞こえて来る話を要約すると、その職員は恋人の気持ちが本当に自分にあるかどうかが判らず、プロポーズに踏み切れていないようだ。


「振られるのが怖いのか。 情けないのう、それでも韓国男子か?」


老人のその言葉は、まるで俺に言われたように思えた。





チェギョンへの電話は、夏休みに入ってから忙しいと言い訳して一度も出来ていない。
つまり、もう半月以上声も聞いていないのだ。

お花畑のギョンによると、チェギョンは時々ガンヒョンとともに公園の掃除などをしているらしい。
俺も同じところに行きたいが、やはり忙しくて時間が取れない。

チェギョンには会いたいが、忙しいんだと自分自身に言い訳していたのである。




俺は、オ・ヘジンに言われたことで、やっとチェギョンへの気持ちに気付いていた。
が、彼が悩んだように、今更だと思われないだろうかとか、チェギョンとアン・ジョンファは違うんだとか色々考えてしまっていたのだ。


だが、あの老人の言葉は俺の気持ちを言い当てていた。
俺は、チェギョンに振られるのが怖かったのである。




それでも韓国男子か?


老人の言葉で、漸くチェギョンへの告白を決心した俺は、チェギョンを宮に呼ぼうと携帯を手にした。
すると先にそれが鳴った。



「何だ」

お花畑のギョンだったので、つい素っ気ないひとことになったのだが、ギョンは気にすることなく、自分もボランティアをするんだと自慢気に言った。

『俺もガンヒョンたちとボランティアするんだ!』


王立小学校の掃除に行くのだとか。
夏休み最後の日曜日に小学校で何かのイベントがあって、その準備にと掃除したり会場の設置をしたりするそうだ。

ギョンが何をしようと特に興味は無いが、ガンヒョンが行くということはチェギョンも行くのかもしれない。


「もしかしてチェギョンもか?」
『ああっ。 インもだぜっ』


4人で行くらしい。
ギョンはその後、ガンヒョンがどれだけ可愛いかという話を始めたので、俺は適当に相槌を打ちながらも、そのイベントの手伝いはいつなのか何時からだとかを聞き出した。



チェギョンたちが小学校に行くのは来週の金曜日で、俺はその日の公務は午後からなので、午前中に小学校に行ってチェギョンに会って告白!と、俺は勝手に計画を立てた。





小学校での告白は驚かせたいので、チェギョンに電話もせずに週が変わった時、突然ユルからおばあさまに連絡があったそうだ。

「昨夜義誠大君から電話があってのう。 イギリスで好きな女性が出来たそうだ。 故に皇籍を離れたいと言うて来た」
「「「え??」」」

父上と母上、俺は声を揃えた。



ユルが好きになった女性はイギリス人なので、外国人の妃は認められないだろうし彼女に有らぬ苦労をさせたくないと、ユルは皇籍の離脱を口にしたらしい。

そこまで言うからには、既に将来の約束をしているのかと思っていたら、なんとその通りだったようで、既にプロポーズして承諾をもらっているらしい。

ほんの半年くらい前までは、チェギョンを得ようと俺を敵のように見ていたユルがと、ただただ驚きだった。


「恵政殿さまはなんておっしゃっておられるのでしょう?」
「最初は反対したらしいが、相手が貴族だと聞いて許したようだ」

ユルの彼女はイギリス貴族の娘だそうだ。

「息子の幸せを願ったのだと思っておこう」



思いもしないことになってもしかしたら一番驚いただろうが、おばあさまの言う通りユルの幸せを願ったのか熱意に絆されたのか、恵政殿さまも同じように皇籍を離れるそうだ。



何やら一気に物事が進んで今ひとつ俺の頭が追い付かないが、ユルがそれでいいと言うなら、それでいいのだろう。



ユルも好きな女性を見つけて掴まえた。
今度は俺だ。





そして次の日。

「太子。 明後日の金曜日、公務は午後からであろう? 久し振りに私とお茶をせぬか?」
「あ、おばあさま、その、私は用がありまして」
「ほお? どのような?」
「あの・・・」

チェギョンの返事がどうなのか判らないというのに、今ここでチェギョンに告白すると言えば、チェギョンを縛ってしまうことになりかねないと逡巡した。

が。

「どんな用事じゃ? もしかして私が喜ぶことかのう?」

どうやらおばあさまはお見通しかもしれない。
俺は意を決してはっきり答えた。

「チェギョンに告白しようと思っています。 ですのでおばあさまとお茶は出来ません」
「ほほほ、そうかそうか。 頑張るのじゃぞ」
「はい、おばあさま」





そして金曜日、薔薇の花束を手に小学校の駐車場で車を降りて、翊衛司には少し離れていてくださいと頼んで、俺はチェギョンたちが居るグラウンドに向かった。






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