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参拾弐 11


大学生二人が脱落して候補がチェギョンたち3人になったことで、不可が付いてるヒョリンが外されて、チェギョンとアン・ジョンファが残るだろうことは簡単に予想出来た。

なので、何とかユルにチェギョンを諦めてもらうことは出来ないかと固い頭を捻っていたら、その前におばあさまが揀擇を止めてしまったのである。



「もう止めよう」
「え? 何をですか、母上」

朝の挨拶の場での突然のおばあさまの言葉に、父上がきょとんとして聞き返した。

「揀擇じゃ。 早すぎた、私が悪かった」
「は?」

俺とユルはまだ高2なのに、今から妃を決めようとした自分が間違っていたと、おばあさまは俺たちに向かって頭を下げたのである。
驚いたのは俺たちのほうだ。

父上、母上、俺とユル、それに恵政殿さまは、揃って揀擇の中止を受け入れた。
高校在学中に、俺とユルは社会勉強と称してボランティアに行くことをおばあさまに提案され、俺たちはやはりそれも受け入れた。


「済まなんだのう、太子、大君。 そなたたち二人を振り回してしもうた」
「いいえ、おばあさま。 早すぎたというのは判ります」

すぐに俺がそう言ったことで、ユルもその場ではにこやかに答えていた。

「これで良かったと思います」

だが。




「シン! お前がおばあさまに何か言ったのか?」
「え? 何のことだ?」
「惚けるな! お前がその気なら僕は負けないからな!」

俺の後を追い掛けて来てそう言い放ったユルは、コン内官の前を横切って自分の楼閣の戻って行った。

「・・・コン内官。 ユルは何か誤解してるんでしょうか?」
「急にどうされたのでしょう・・・?」

コン内官も戸惑っているようだった。



学校では揀擇の話も出来ないので、チェギョンに電話だけしておいた。
すると、まだ17なんだからもっと色んな経験をするべきだと言われた。
それもそうだな。

ボランティアに行くなら一緒にと言うと、若い人は別々に行くべきだと言う。
残念だが、それもそうかも。




学校では表立って何事も無いが、妃候補たちの揀擇が無くなったことは王族たちには既に知らされているので、皆内心何を思っているのかと、俺は少々変に勘ぐってしまっていた。

すると、ファンが俺に謝って来た。

「ごめん、シン。 実は昔のことが皇太后さまのお耳に入ったんだ。 多分それが原因で揀擇が終わったんだと思う・・・」
「え??」


おばあさまが、チェギョンたちの学校での様子を知ろうとチェギョンとアン・ジョンファとファンの父親を参内させたらしい。
ファンが昔のことを父親に話していたことで、その時それがおばあさまの耳に入ったようだ。


「ごめんシン・・・」
「ああ、いや、それは違う。 それが原因で揀擇が終わったのなら、未熟な俺のせいだ。 馬鹿な俺に腹が立ったんだろう」


あの時のことはヒョリンがインに言わせたようで、そのことも知っていたファンは、やはりそれも父親に伝えていたそうだ。
それを聞いたおばあさまが、ミン家に正式な文書を送ったらしい。

『小学生のうちから人を使って裏で謀をするような娘を皇室に入れることは絶対にせぬ。 揀擇の間も不可ばかりだった。 故に今後二度とこういうことは無い。 息災で過ごされよ』

簡単な挨拶のあとのこの拒絶で、俺と親しいというヒョリンの嘘を信じていたミン家の当主でありヒョリンの父親が怒って、ヒョリンをアメリカに留学させてしまったらしい。


「ああ、だから今日、あれが終わったはずなのにあの女が現れなかったのか」

煩い女が居なかったことに納得していると、ファンが目を丸くした。

「・・・もしかしてヒョリンが飛んで来るのを待ってたの?」
「まさか!」





その後、特に何事もなく数日が過ぎたのだが、ある日突然、ユルがイギリスに行くことになったと聞かされた。
準備にかかっているからと、ユルと恵政殿さまは今この場には居ない。

「突然留学ですか?」

まるでヒョリンのようだと思っていると、それと大差ない理由だった。
なんと、チェギョンを自分の妃にという勅命を出してくれと、父上に頼んだらしい。

「勅命!? な、何故!?」
「カン・インとやらがチェギョン嬢に告白したからということだった。 チェギョンは僕のものだからインに取られたくない、とか言ってな」
「インがチェギョンに!?」


チェギョンに告白!??
俺でさえまだなのに!


あ・・・。
俺でさえまだ・・・?


自分の心の声に驚いている俺に気付くことなく、父上の話は続いていた。

「そのことで母上が怒ったのだ」

おばあさまがそれを聞いて、ユルに怒ったらしい。
人の気持ちを慮ることも出来ぬのか!と。



「それでイギリスですか?」
「大君としてではなく一般人としての留学だ。 暫く苦労すればよいのだ」

おばあさまが顔を顰めたまま、そう言った。
護衛は付くものの世話係は付けないので、なんと恵政殿さまも一緒に行くそうだ。

「母親だということだろう。 恵政殿に家事が出来るとは思えんが」
「・・・」


徹底しているおばあさまに、もう何も言えなかった。
俺ももしかしたら、何かあれば何処かに行かされるかもしれない。




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