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saoさまにいただいた画像です。
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saoさま55(2022年1月TOP)





はじめまして。

韓国ドラマ「宮」の二次小説を書き綴っています。



全くの個人の趣味ですし、
ド素人ですのでおかしな表現も多々あるかと思いますが、
皆さまの広いお心でお許しいただきたく思います。




主人公が辛いお話も多くありますし、増えて行くかと思います。
そういうのは嫌だと思われるなら、そっと回れ右をなさってください。


誹謗中傷コメントは、読む私が辛いので控えていただきたいです。

何と言っても個人のブログなので、
お話が気に入らなくても、眼を瞑っていただければと思います。


よろしくお願いいたします。





saoさま36(2022年1月TOP)






画像付きの記事につきましては、
「限定公開」とさせていただいています。
     (桃っぽいシーンがあるお話もです。^^;)

パスワードが付いているので、クイズの答えを入力してください。
クイズはドラマ関連のものです。



<saoさま原案のお話>にもsaoさま作の画像が付いているので、
全てにパスワードが付いています。




2022年カレンダー1の1





<bellの小部屋>のお話のシン君は皇太子ではありません。
皇太子でなきゃ嫌だと思われる方は、行かれないことをお勧めいたします。




saoさま22(2022年1月TOP





当ブログ内の画像は、個人で楽しむためのものです。
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転載や持ち出しは決してなさらないでください。



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伍拾弐 5



「大君殿下にこの本をお届けして」
「お茶のご用意をして来なさい」

あれから、大君殿下への御用をたびたび言いつけられる。

最初の御用で媽媽の楼閣に行った時に、「君とのこと、陛下たちは賛成してくれたよ」と媽媽に言われた時は暫し茫然としたものだ。

そんな馬鹿な。

その思いしかない私の前で、媽媽は笑顔だった。



こうして笑顔で接してくださる媽媽のことは、決して嫌いではない。
が、そういう対象として見たことも思ったこともないので、私自身どうしていいのか判らなかった。

だが、媽媽と結婚など考えられない。
陛下方が賛成したということも信じられないし、王族の方々からも不満が出るはずだ。


それに、最近は先輩女官さんたちの眼も冷たくなって来ているのだ。

「身体を使ったんでしょ。 自分の立場も考えずに」
「若い子って恐ろしいわね」

などと聞こえよがしに言われ、私に気付いたふりをして、先輩女官さんたちは鼻で笑った。

「あら、ごめんなさい。 未来の大君妃なのに」

そう言うと、その女官さんは私を突き飛ばすようにぶつかって何処かに行ってしまう。





ガンヒョンオンニは、そんな私を心配してくれた。

「大丈夫? チェギョン」
「オンニ・・・」
「あなたに、妃になろうという気がないのは判ってるわ。 でもお断りも出来ないわよね」

その通りなのだ。

「いっそ開き直って結婚するとか? そうしたら妃殿下もの女官もあなたを苛めるのをやめるわよ」
「え? 私は妃殿下に苛められてるんですか?」

なんで?

あ、と口を押さえたオンニは、大君殿下のせいよと言った。

「女官が妃になるのが許せないのよ、きっと」

ああ、それはあるだろう。
妃殿下は王族のお嬢様だから

「でも多分、話が纏まってしまう前に、皇太后さまが意思確認してくださるはずよ。 その時にとんでもございません!とか言えばいいわ」
「皇太后さまが? 判りました」


皇太后さまなら、なんとかしてくださるかもしれない。



でも、いくらオンニが慰めてくれても、皇太后さまに縋ろうと思っていても、妃殿下や女官さんたちの冷たい眼に、だんだん身の置き所がなくなって来ていた。





そんなある日、1人で宿舎に帰ろうとした私は、突然後ろからハンカチのようなもので鼻と口を押さえられて、多分気を失ったらしく、眼を覚ますとジメジメした暗い部屋に寝かされていた。


「・・・此処どこ?」


呟いた声は、壁に反響するのかと思いきや、吸い込まれるように消えてしまった。
相当広いようだ。
暗さに眼が慣れて来ると、鉄格子があり、私は牢屋に入れられていたことが判った。


宮の中か?
だが景福宮にはこんな場所はなかったはずだ。
古宮なら地下があったと思うが。

まさか、古宮?
何故こんなところに?



ポケットに入っていたはずの携帯はなく、出して欲しくて、私は声を上げた。

「誰か! 此処から出してください!」

鉄格子を握ってガチャガチャ言わせながら叫んでも、広いのが判るだけで何の物音もしない。

「助けて!!」
「お願いします、助けてください!」



窓もなく灯りもなく、声が枯れるまで叫んでも誰も来ず、私はとうとうその場に座り込んだ。


誰がこんなことを?
大君殿下のことが原因だろうか?
私を邪魔に思った誰かによって閉じ込められたのだろうか?
でもまさか死ぬまで放置されないよね?




寝る場所もないので、まんじりとも出来ず膝を抱えて座っていた私は、ほんのり明るくなってからまた叫んだ。

「此処から出してください!!」


何度叫んでもやはり誰も来ず、夜になったのかまた真っ暗になり、部屋の端の穴で用を足して、泣きながらまた明るくなるのを待った。





次の日もまた次の日も誰も来ない。
叫ぶから元気だと思って様子を見に来ないのかと、黙っていたのだが、再び真っ暗になっても何の物音もしなかった。

水も飲まずもう3日。
私が死ぬのを待っているとしか思えなかった。

鉄格子はビクともしないし、当然鍵もない。

何故こんな目に遭わなければならないのか。
大君媽媽を恨めしく思ってしまった。




その後、疲れ果てて寝入ってしまっていたらしく、誰かに肩を揺らされて眼を覚ますと、薄暗い中、誰かが私の前にしゃがんでいた。

「ごめんなさいシン女官。 遅くなって」
「・・・へミョンさま」

何故へミョンさまが?






「こっちよ」

渡されたペットボトルの水を飲みながら、歩ける?と気遣ってくださるへミョンさまに付いて外に出ると、やはり古宮だった。


「ごめんね、遅くなって」
「何故こうなったか聞きたいだろうけど、言えないの。 ごめんなさい」


へミョンさまは何度も謝ってくださる。
でも、私を閉じ込めたのはへミョンさまではないはずだ。





理由も聞けないまま、私たちは一台の車の前に来た。

「荷物は車に載せてるわ。 後は彼女の言う通りにして」

運転席を見ると、なんと皇太后さま付きのチェ尚宮さまだった。

「ごめんねシン女官。 いえ、シン・チェギョンさん。 元気で」

へミョンさまは私にハグしてそう言うと、チェ尚宮さまに頷いてその場を離れた。



ついその後ろ姿を見送っていた私に、チェ尚宮さまが声をかけて来た。

「早く乗りなさい。 すぐに此処を離れないと」
「あ、はい、チェ尚宮さま」
「後部座席に荷物があるわ。 乗ってから確かめて」
「はい」


私が乗り込むと、チェ尚宮さまはすぐに車を発進させた。
何処に行くのだろう?




伍拾弐 4



東宮殿には、今日もチェギョンの姿が見えない。
ユルのところだ。
あれからユルは、自分のことを知ってもらうんだと言って、時々彼女を呼び出している。

女官だから断れないだけだろうが、もしかしたらチェギョンもユルを好きかもしれないし、大君妃になれるのを喜んでいるかもしれない。

だがそうだとしたところで、俺には関係ないことなのだ。




ヒョリンに言われた検査は先日行なったが、結局俺に問題はなかった。

『不妊の夫婦であっても、どちらにも問題がない場合が多々あるのです』

侍医はそう言ったが、ヒョリンは納得していないようだった。
皇太子故にそう言わせたと思っているのだ。


「民間の病院に行きましょう」

ヒョリンはまだそう言ったが、皇太子夫妻が不妊治療のために通院などダメだと祖母が反対したのである。

「大体、侍医が信じられぬというのか?」
「ですが皇太后さま・・・」

反論しようとしたヒョリンの言葉は、母に遮られた。

「太子に問題がないと再確認されたのだから、次はあなたでしょう」

とうとうヒョリンは口を噤んだ。
当然だな。



次の日、ヒョリンの検査も行われたが、やはりこちらも問題なしとのことだった。

「まあ、そう慌てることでもあるまい」

祖母の言葉に、俺の方が少しほっとした。






「チェギョンってほんとにいい子だよ」
「・・・シン女官のことか?」

笑顔のユルに、俺はわざと“シン女官”と言った。
下の名前を知っていると思われたくなかったのだ。

「うん。 で、キム女官に聞いたんだけど、チェギョンはよく妃宮さまに叱られてるんだって?」
「まあな」
「彼女、相当気を付けてるから失敗すると思えないんだけどな〜」

首を捻っているユルを見ながら、俺は黙っていた。
まさか、俺の邪な気持ちのせいで苛められるなどと、口が裂けても言えない。


その後、チェギョンの笑顔が可愛いんだよ〜と散々のろけたユルは、ヒョリンが訓育から戻った気配を察して、やっと俺の部屋から退室した。



「・・・」

ユルの話を聞くのは辛い。
だが慣れなければ。
2人が結婚したら、一生ユルの隣で笑っているチェギョンを見ることになるのだから。





へミョンからは電話が来た。

『ユルがシン女官をね〜』


惠政殿さまもへミョンもあの場に居なかったので、後から祖母に聞いたらしい。
びっくりした!と言いながらも、あの子は可愛いからねと続けたへミョンは、反対する者が居なかったことについても驚いたと言った。


『いくらイマドキとはいえ、女官はダメだ!って人は居なかったのね』
「多分母上が賛成したからだろう」

そう言うと、まあねという返事が返って来た。

『でも、皇后さまが一番に賛成するとは思わなかったわ。 ねえオッパ、何故だと思う?』

そう言われても、ユルが次男だからとしか答えようがなかった。

『まあそうなんだけどさ。 でも本当に結婚することになったら、元女官でしたなんて発表出来るのかしらね』



まだ納得していないかのようなへミョンは、そこまで言ってから、お母さまが戻った!と、慌てて電話を切ってしまったが、俺はそのへミョンの言葉に考えさせられた。

確かに、女官だったとは発表出来ないかもしれないし、何より王族が黙っていないのではないだろうか?

「・・・・」

チェギョンに何もなければいいが。





そう思っていても俺が動くわけにはいかず、それとなくユルに言うしかなかった。

『それは思ったけど、でも皇族皆が賛成してるんだよ? 声を上げる王族は居ないんじゃない?』
「だが陰で動くかもしれない」

そこまで言うと、ユルは電話の向こうで、ドラマの見過ぎだと笑った。

『大丈夫だって』

が、一応護衛は付けてるらしい。

『万が一の時のためにね。 僕が守らなきゃ』
「そうか」

ユルがそこまでしているのなら、もう俺が言うことは何も無い。





ところがひと月以上経った頃、突然チェギョンが居なくなってしまったのである。
宿舎の部屋は片付けられていて、置き手紙があったらしい。

『大君殿下、申し訳ありません。 私は宮を出ます。 他に好きな人が居るので、その人のところへ行きます』






「・・・こんなことになるとはのう」

その祖母の言葉が全てだろう。
ユルは勿論俺たちも、まさかチェギョンがこんな風に出て行くとは思いもしなかったから。


父は何も言わないし、母は何やら考え込んでいる。

ユルはというと、見張りの目を掻い潜って逃げたと怒っていた。
裏切られたというのだ。


護衛じゃなく見張りだったのかと思ったが、それよりも、他に好きな人が居るということは気持ちが重なっていたわけではなかったのだから、裏切りではないだろうに。


「直接断れなくて逃げたのでしょう。 大君、もう忘れなさい。 たかが女官です」

そう言った叔母の惠政殿さまに、驚くことにユルは笑顔で答えた。

「そうですね、叔母さま。 大君妃になれるというのに逃げるなんて、そんな愚かな娘だとは思いませんでした」

その言葉に、思わずユルを見た俺の前で、ユルは祖母に頼んだのである。

「おばあさま、私がどうかしていました。 王族の中から私の妃を選んでください。 出来るだけ早く結婚します」
「シン女官に見せ付けたいのか?」

何?

「はい、おばあさま」
「・・・そうか、判った。 そうしよう」



ユルと祖母の会話に、誰も口を挟まない。
父も母も黙っている。
心なしか叔母は喜んでいるように見えるが、へミョンは何を考えているのか視線だけを動かしている。

そっと隣のヒョリンを窺うと、こちらも眼だけがキョロキョロ動いていた。


そして俺はというと、好きな子に逃げられたからと、見せ付けるためにあっさり誰かと結婚すると言ったユルが信じられなかった。
逃げられて腹が立ったのかもしれないが、それだけの気持ちだったということだろうか?


俺なら・・・、先ずは探して、彼女の幸せを確かめたい。
そうすれば諦めもつくだろうし、他の娘との結婚があるとすれば、その次だろうに。




伍拾弐 3



私はシン・チェギョン。
1歳の時に父が事故死して、7年後に母が病死して、私は孤児になった。


8歳の私を引き取る親戚はなく施設に入ったのだが、はっきり言って酷いところで、学校にも行かせてもらえず掃除や洗濯は勿論、施設の畑で採れた野菜を道路で売ったり、時には物乞いのようなことまでさせられた。

大人の同情を買うためにお風呂にも入れずボロの服を着ていたので、お金をくれたりお菓子をくれた大人も居た。
時には、何処の子かと聞いてくれた人も居たが、先生の1人が近くで見張っているので事情を言うことも出来なかった。
以前、したたかに殴られた子を見ていたから。


子供は20人足らずで、大きい子で12歳だった。
13歳になる子供はいつの間にか居なくなっていて、もしかしたら引き取られたのかもと淡い期待を抱いていた時、先生たちの話から、どうやら売られたらしいことに気付いたのだ。


此処に来て3年、私が一番年長でもう11歳だ。
あと2年で売られるかもしれない。

早く此処を出なければと思っていても、逃げることも出来ずに月日は過ぎた。





1度も学校に行けないまま12歳になった頃、驚くことに皇后陛下が視察に来ると、先生たちが騒いでいた。

当日、久しぶりにお風呂に入り、初めてまともな服に着替えさせられた私は、チャンスだとばかりに、施設の先生たちが皇后さまに気を取られている間に逃げ出した。

この施設以外なら何処でも良かったから。



なのに呆気なく見つかってしまったのである。

「何処へ行くの? 施設の子でしょ?」

スーツを着た綺麗なお姉さんだった。

「この施設は嫌です! 別のところに行きたいです!」


連れ戻されるのかと思い、私は震えながらその人に訴えた。
眼を見張って私を見たそのお姉さんは宮の女官さんで、イ・ガンヒョンさんといった。




その後、その施設に調査が入って、園長や先生たちは全員逮捕され、当然施設は閉鎖されて、子供たちはそれぞれ他のところに移れたのだ。


でも私は、「下働きでいいです!」と頼み込んで宮に住まわせてもらえることになった。
皇后さまがそんな活動をなさっているとかでそういう女官さんは他にも居るらしく、下働きどころか宮の見習い女官にしてもらえたのである。

宮内の職員宿舎に住まわせてもらえて、ガンヒョンさんに勉強を教えてもらって、皇室のおかげで中学にも高校にも行かせてもらえた。

皇室に一生を捧げる!

この時私はそう決心した。




見習い女官は皇族方の近くに参じることはない。
なので遠くからお姿を拝するだけだが、それでも皆さまのオーラというか雰囲気が気高くて、やはり雲の上の存在だなあと思う。

3年前の皇太子殿下のご婚礼は特に荘厳で素晴らしく、妃殿下もお綺麗で、国民としてとても誇らしかった。




高校を卒業してから正式に女官になれた私は、大妃殿に配属された。
皇太后さま付きのチェ尚宮さまたちに叱られながらも色々教えてもらえたし、皇太后さまも穏やかでとてもお優しくて、日々ご挨拶に来られる陛下方に間近でお眼にかかれた。

孤児の私がこの場に居られることが信じられないくらいで、緊張し過ぎて失敗しないように、本当に気を付けていたものだ。




そして2年前、今度は東宮殿に配属された。
普段「オンニ」と呼ばせてもらっているイ尚宮さまとキム女官さんには以前から可愛がってもらえていたので、それは嬉しかったが、何故か妃宮さまの前で失敗を繰り返してしまうのだ。

お茶を運ぶと突然扉が開いて零してしまったり、何かに躓いて大きな音を立てて叱られたり、ドレスの色が気に入らないと投げ付けられたりもした。

でも悪いのは私なので、ただただ謝罪するしかない。


殿下は、妃宮さまの声が聞こえていらっしゃるようだが、2人揃って怒るのはどうかと思われるのか、私には何も仰らない。
それは少しほっとしている。





「今日も叱られてたわねチェギョン」
「はい・・・」

夜、仕事を終えて宿舎に帰る道でガンヒョンオンニが私に言うには、妃宮さまは3年になるのにお子様がまだだから気が立ってるのだろうということだった。

「皇太子妃だもの、その辺は気になるのよ」

ああ、そうかもしれない。

「だから大らかな気持ちで妃宮さまを見てあげてね」
「そ、そんな気持ちで妃宮さまに接するなんてとんでもないことですけど、失敗しないように頑張ります!」


オンニは30代後半なので、妹を見るような気持ちになれるのかもしれないが、私は無理だ。
せめて私の失敗のせいで余計に苛立つようなことは、出来るだけ避けさせて差し上げたい。



「じゃね、おやすみチェギョン」
「おやすみなさい、オンニ」


この時代女官は「王の女」ではないので、女官たちは結婚出来る。
オンニは5年前チャン・ギョン内官さまと結婚して、今は私が住んでいる職員宿舎ではなく、家族用の宿舎に住んでいる。
子供は、出来なかったのか作らなかったのか居なくて、二人暮らしだ。

それはそれで幸せそうだし、少し羨ましくもあるが、私は1人がいい。
今でも、皇室に一生を捧げるという気持ちは変わっていないのだ。





そんなある日、妃宮さまの経本を運んでいると、不意に義誠大君殿下が現れた。
慌てて俯くと、思いもしない言葉が聞こえて来た。

「シン女官。 僕は君が好きだ」

・・・・・え?

何を言われたのか判らなかった。
だが顔を上げることは出来ない。

「君が好きなんだ。 結婚を前提にして交際を始めたい」
「・・・・・」

側室になれということだろうかと一瞬思ってしまったのは、当然だと思う。


そんな私に気付いたのかどうか、大君殿下は「急にごめん」と言った。

「突然過ぎたね。 でも僕の気持ちは本物だし、君を妃にしたいと思ってる」


妃??
側室ではなく??


だがやはり顔を上げることは出来ず、私は視線を下げたままそんなことを考えていた。

「返事は急がないし、先ずは僕のことを知って欲しいんだ。 だからこれからは時々君を呼ぶからね」


明るい口調でそう言うと、大君殿下は来た道を戻っていかれたが、私は暫しその場から動けなかった。



孤児の私が大君妃になるというのか?
まさか 。


が、すぐに、女官はダメだと皆さまが反対なさることに気付き、恐れ戦いていた気持ちは急に楽になった。

そうだ、そんなことになるわけないのだ。
よかった。




弟の好きな子

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